2020年ノーベル医学生理学賞に思う
先日、今年のノーベル医学生理学賞がC型肝炎ウイルスを発見したアメリカ国立衛生研究所のハービー・アルター氏ら米国とカナダの3人に授与されるというニュースが入ってきました。C型肝炎ウイルスは日本で約100万人以上の感染者がいると考えられ、その中には自覚がないまま症状を悪化させ、約70%の人が肝硬変や肝がんに移行してしまうと言われています。実は1970年代半ばまでC型肝炎ウイルスの存在は明らかになっておらず、当時はA型とB型の肝炎ウイルス以外の未知なる病原体のことを“非A 非B”型肝炎ウイルスと呼んでいました。現在ではとても信じられませんか、当時は歯学部の臨床実習は素手で行っており、何人かの学生もこの未知なるウイルスの犠牲になったものです。しかし彼らの研究によってC型肝炎ウイルスの存在が初めて解明され、その後の高感度の血液検査や抗ウイルス薬の開発につながり、C型肝炎の早期発見や治療へと結びついていったのです。
今年は想定外の新型コロナウイルスの侵略によって、我々人類は防戦一方の異様な一年になってしまいました。しかしながらこのようなノーベル賞のニュースに接する時、幾多の微生物との戦いを乗り越えてきた先人たちの英知と努力に敬意を表するとともに、近い将来必ずや人類が反転攻勢に転じ新型コロナウイルスを克服する日が訪れるものと期待します。来年こそ皆様に光明射す一年となりますように・・・。 院長
2020年10月09日 19:51