歯科医院でコロナ感染が1例もないのはなぜ?
1月に吉村大阪府知事がツイッターで「大阪府には5500軒もの歯科医院があるが、新型コロナのクラスター発生はゼロ。歯科医院は利用者がマスクをできない環境にあるにもかかわらず、驚くべき結果が出ているのは感染予防対策のたまものと思う。専門家には分析してもらいたい」という趣旨の発信をしました。確かにそのコメントのとおりで、3月時点においても依然として日本国内で歯科治療を通じての新型コロナ感染の発生は1例も報告されていないのです。なぜなのでしょうか?その理由は、歯科医院では過去のウイルス性肝炎、HIV、新型インフルといった感染症の経験を経て、新型コロナが出現するはるか以前より標準予防策(スタンダード・プリコーション)を徹底しているからです。スタンダード・プリコーションとは、受診者の感染の有無にかかわらずすべての受診者が何らかの病原性微生物を保有しているものと想定し、日ごろから感染予防対策を標準レベルまで引き上げて受診者全員に対して実行するという考えです。具体的にはマスクやゴーグルを常時装着することや頻回の手指消毒、口腔に触れるごとのグローブの交換、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)による器具の滅菌や使い捨て材料・器具の使用、ハンドピース類の1回ごとの消毒、口腔外バキュームの使用といったさまざまな感染対策を講じていることが挙げられます。そういえば確かにコロナ以前には、歯科を除く他の診療科では必ずしもマスクやグローブを装着して診察する必要はありませんでした。
以上のことから歯科医院では新型コロナウイルスに対しても感染リスクが低く、安全な場所であると評価されるのです。むしろ感染を恐れるあまり受診を控えてしまうことによって、本来治療を要する歯周疾患やむし歯が悪化してしまうほうが避けるべきことですね。今後切り札となるワクチンによってきっと好転の兆しが見えてくるものと期待します。院長
2021年03月07日 08:36