オリンピック・パラリンピックと歯科
5月上旬の現時点で、新型コロナウイルス感染症の拡散による緊急事態宣言が兵庫県を含む4都府県に発令中です。平和の祭典東京オリンピック・パラリンピックの開催がかなり不透明な状況になってきましたが、7月には状況が好転していることを願います。閑話休題。スポーツアスリートの育成と歯科には密接な関係があるのをご存じでしょうか。日本では1988年のソウルオリンピック以降、オリンピック・パラリンピック代表候補選手に対する歯科健診が始まりました。現在候補選手に対するメディカルチェックには、内科、整形外科、そして歯科の3科が義務づけられています。
歯の咬合力(噛む力)と運動能力の関係を調査した結果、咬合力が強くしっかり噛める選手のほうがスポーツ能力テストのあらゆる項目で良い成績であることがわかっています。つまり有望なアスリートを育てるためには歯科医学からのサポートが重要になってくるのです。具体的には、咬合が確立していないジュニアの時代から食育と歯科の連携の中でよく噛んで食べることを教育し、また咬合力トレーニングによって顎骨の発育を促します。ユース時代になればパフォーマンスに悪影響するむし歯や歯周病といった歯科疾患に対する指導や、スポーツ外傷に対するマウスガードの普及啓発が必要です。さらにトップアスリートの段階になれば、健康な歯と咬合による体幹や上下肢など遠隔筋の活性化効果や、パフォーマンス能力向上のためのマウスピースを活用し、最終的にメダル獲得を目指していくという長期的ビジョンに立ったサポートの実行が必要です。
歯科の立場から言えば、世界の強豪アスリートに最後に競り勝つためのカギは健康な歯と顎骨と咬合です。スポーツ観戦の際にこういった視点から観察してみると、意外と面白い発見があるかもしれませんね。 院長
2021年05月02日 14:19