NYタイムズの記事は正しい? いえ、歯科医院は安全なところです。
歯科医師、歯科衛生士はウィルス感染リスクの高い職業であると一部マスコミで報じられています。これはアメリカのニューヨークタイムズに掲載された記事を根拠にしているものと思われますが、この記事によると「距離が近い」「疾患に接しやすい」の“2つの軸”だけで職業別のグラフを作成しそのように想定しているわけです。しかし、本当にその2軸だけで判定できるのでしょうか?実際、多くの感染者が出ているのは内科医、看護師、介護施設従事者、保育士といった職業の人たちですが、これらの方々に比べて歯科医療従事者のほうが他人との「距離が近い」はずです。また販売店や飲食店の店員さんは「疾患に接しにくい」はずですが、罹患数が多いという結果が出ています。アメリカの新聞の記事が本当であれば、歯科医療従事者にもっと多くの感染者が出ていても不思議ではありませんが、実際にはそうなっていませんません。また5月上旬時点で国内の歯科医院での患者さんの感染報告は一例も出ていません。なぜでしょう?この最大の理由は、多くの歯科医院が何年も前から肝炎ウイルスやHIVウイルスなどの感染予防対策としてスタンダードプリコーション(すべての受診者がすでに何らかのウィルス感染者であると想定し、感染予防のレベルを上げて標準化しておくこと)を徹底している結果だと考えます。歯科では口腔内で使用する機械類、器具類は一人の患者さんごとにオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で滅菌したものを使用したり、あるいは使い捨て(ディスポーザブル)できる器具や材料を使用しています。またグローブはお一人の口腔に触れるたびにその都度新品に交換します。そして患者さんが座るチェアや周囲の機械類は、患者さんが入れ替わるごとに消毒用アルコールや次亜塩素酸水で徹底的に清拭しています。さらにはマスクはスタッフ全員が毎日新品に交換し清潔を保っています。こういった理由から、歯科医療従事者のウイルス感染リスクはもちろん、歯科医院受診者の院内感染リスクは今後も低く推移するものと考えます。ウイルス感染予防への知識があり、対策がしっかりできている職業であるかどうかという視点の“第3の軸”が、残念ながらNYタイムズや昨今のマスコミ報道では抜けているように思います。ご参考にしていただければ幸いです。院長
2020年04月12日 10:10