災害時にこそ大切な口腔ケア
甚大な被害が発生した東日本大震災から来月でちょうど10年になります。死者約1万6000人、行方不明者は現時点でいまだに約2500人強という未曽有の大災害でした。以前本ブログや広報みき誌上で、身元不明遺体の身元確認に貢献した歯科医師の活動について述べました。今回は“震災関連死”と口腔ケアの関連性について詳述します。1995年の阪神淡路大震災後から“震災関連死”という言葉がクローズアップされました。阪神淡路大震災では約6500人弱の死者を出しましたが、そのうち圧死などの直接死は約5500人で、それ以外の原因で震災後2か月以内に死亡した約900人強の方々が“震災関連死”と言われます。東日本大震災においても震災関連死は約3800人に達しました。その後の調査で震災関連死の大半が65歳以上の高齢者で、原因の約4分の1を占めたのが肺炎だったということがわかっています。極端な水不足の避難所生活の中で口腔ケアの不良が要因となり、誤嚥性肺炎を引き起こしたものと考えられています。震災発生直後には口腔清掃にさえ手が回らない状態が何日間も続き、歯ブラシも避難所にまったく届かず、また水不足の劣悪な環境の中できっちりとした口腔ケアが実行できないなどの理由によって、口腔内の細菌が爆発的に増殖してしまったことが容易に想像できます。
自然災害は今日明日にも私たちの身に起こるものと思っていなければなりません。もし万一私たちが避難所での生活を余儀なくされた場合でも、日ごろから口腔ケアの意識を高めておくことによって誤嚥性肺炎の発症を防ぐことができます。普段からかかりつけ歯科医院での定期健診を励行し、口腔ケアのスキルを身に着けておくことが大切ですね。院長
2021年02月22日 09:42