安倍首相の辞任表明のせいですっかり影が薄くなってしまいましたが、実は同じ8月28日の首相会見の中で新型コロナウイルス感染症に対する2類感染症相当の見直しが表明されています。
新型コロナウイルス感染症は、1月28日に結核や鳥インフルエンザと同等の感染症法の2類感染症相当との閣議決定がなされ、さらに2月には「無症状者への適用」や「入院要請」「外出自粛要請」が付加され、致死率の非常に高いエボラ出血熱やペストなどの1類感染症と同じ扱いとされてきました。確かに当初の武漢での悲惨な報道やクルーズ船での悲劇的な映像を見ると無理もなかったことかもしれませんが、その後8か月以上を経過し様々な統計が出てきた結果、どうやら新型コロナウイルス感染症はそこまで怖い病気なのかどうか、冷静に議論する空気が政府内に出てきたことは喜ばしいことです。たとえば9月下旬時点での統計では、日本国内での新型コロナ陽性者は8000人弱、死者は約1500人、そして20歳以下の死者はゼロとなっています。ちなみにインフルエンザでは毎年約1000万人が感染し、約3か月間の流行期間内に小児の死亡例約100人を含む3000人以上の死者が出ます。こういった比較を見るだけでも、政府が指定感染症の見直しと経済の立て直し対策へ舵を切ったことはあながち間違いではないように思います。
“感染”という言葉は我々に非常に怖いイメージを与えますが、たとえば「冬場に風邪をひく」というのもカゼのウイルスに“感染”することであり、実は微生物の感染は日常茶飯事の出来事であって特別に怖がるようなことではありません。特に子供たちにとっては泥や砂にまみれ友達と体ごと触れ合って遊ぶことによって数々の感染を繰り返し、その結果多くの免疫を獲得して将来自然淘汰されない強い肉体に育っていきます。現在の指定感染症扱いに起因する“無菌状態”での過保護な生活が、果たして子供たちの将来の健康に悪影響を与えないでしょうか。
また子供たちへの影響だけでなく、無症状者でも原則入院か自宅待機という制約によってあらゆる組織や人々が委縮し、経済活動や医療現場、人々の日常生活の妨げになってしまっていることは明らかです。たとえばクラスター感染が発生した大学の無関係の学生が勤務先からアルバイトを断られた事例がありましたが、そもそも2週間の入院や休業要請がある限り雇用主としては無理もない反応です。もっと深刻な影響は医療現場の逼迫、保健所の疲弊、飲食や観光産業の混迷であることはここで詳述するまでもありません。政治家も感染症専門家も、ぜひ勇気を持って指定感染症のレベルを下げる議論を進めてもらいたいものですね。 院長
2020年09月21日 17:49